怒鳴ってしまった後の自己嫌悪に悩むママへ
📬 ママ友ドクターからの手紙 ── Vol.05
「怒鳴ってしまった後の自己嫌悪を、なんとかしたい」
ゆみ先生へ
6歳の男の子のママ、さちこと申します。
子どもに怒鳴ってしまった後の自己嫌悪が、もうずっと続いています。
怒鳴った直後は後悔して、「ごめんね」と言って、寝顔を見て「かわいいな」と思って、「明日は怒らないようにしよう」と誓う。でも次の日になるとまた同じことが起きて、また怒鳴って、また自己嫌悪。このループから抜け出せません。
「怒鳴るのをやめよう」と思えば思うほど、怒鳴ってしまった時のダメージが大きくなって、「私はなんてダメな母親なんだろう」という気持ちがどんどん積み重なっています。
アンガーマネジメントの本を読んだり、深呼吸を試したりしているのですが、なかなか変わりません。どうしたらいいでしょうか。
さちこ より
さちこさんへ
お手紙、ありがとうございます。
「怒鳴るのをやめよう」と誓って、次の日にはまた怒鳴って、自己嫌悪する夜がある。そのループ、本当に消耗しますよね。アンガーマネジメントの本を読んだり、深呼吸を試したりしながら、それでもうまくいかない自分を責め続けている。……その真剣さが、文章から伝わってきました。
まず一つだけ、受け取ってほしいことがあります。
「怒鳴ってしまう」ことよりも、「怒鳴った後に自己嫌悪できる」ことのほうが、実はずっと大事なことです。
自分がやってしまったことを振り返れる。「これは違う」と感じられる。それができない人は、変わることもできません。さちこさんはちゃんと、毎回そこに戻ってきている。ループしてしまっているけど、でも、それだけで、もう次に進む準備はちゃんとできています。だから、違ったループに入るためのヒントをお伝えしますね!
ヒント①「怒る」と「叱る」は、全然違う!まずはそこを意識することから。
「叱」という字は「口」へん。言葉で子どもに伝えること、子どもが学べることがゴールです。子どものために、子どもが成長できるように、子どものことを思って行うのが、「叱る」という行為で、子育てには不可欠。
でも「怒」という字の下には「心」がありますよね。これは、怒る側の感情が溢れ出した状態。イライラしていて、もう抑えられなくなった状態。
「怒鳴ってしまった」という時、さちこさんは叱ろうとしていたけれど、怒りになってしまっていた。感情をぶつけてしまった形。結果的に、子どもを怖がらせてしまった。
だから、自己嫌悪になるんです。なんか言い方が間違ってた、思うような結果にならなかった…とわかるから。それは「育て方が悪かった」のでも「母親失格」でもなくて、
さちこさんの心がそれだけ消耗していた、というサインなんです。
怒鳴ってしまうのは意志が弱いからではありません。余裕がなくなっているから、です。
残念なことに「怒る」と、子どもは怖がって一時的に指示を聞いてくれることもあるのですが、たいていは「怖かった」という記憶が残るため、「なぜ怒鳴られたのか(どんな注意を受けたのか)」を理解できないまま、繰り返す…(そして怒られる)の悪循環に入ります。
つまり、「叱る」つもりだったのに、結果的に「怒る」と、親も消耗するし、子どもへ効果的に教えられてないことになります。
では、どうするか👉 なぜ余裕がなくなるのかを知っていこう。
子どもを育てるって、実は一人でやるには限界がある仕事です。生物学的に、子ども一人育てるのには二人以上の大人が必要だということが分かっています。それをどんな形であれ一人で背負っている時間が長いほど、心の余白はどんどん削られていきます。
「そんなこと言っても、うちは頼れる人がいない」という方もいると思います。でも、物理的な助けがなくても、「私は今、相当しんどい状況にいる」と認識するだけで、自分への見方が少し変わります。
怒鳴ってしまう自分を「ダメな母親だ」と責めるのではなく、「それだけ消耗している状況にいる私が、今日もここにいる」と見てほしいんです。
だからこそ、頼れる人・場所あるいは少しでも癒される時間・空間を無理やりにでも確保してください。
もう一つ、聞いてほしいことがあります。
怒鳴ってしまう場面を思い出してみてください。
そこに、子どもへの怒りだけがあるでしょうか。
よく観察してみると、「子どもへの怒り」の奥に、別の感情が潜んでいることがあります。疲れ、焦り、不安、悲しみ……。そして時には、自分が子どもだった頃の記憶。
「人に迷惑をかけてはいけない」「ちゃんとしなければいけない」「もっと頑張れるはず」。子どもの頃に親から何度も言われてきた言葉が、知らないうちに自分の中に深く刻まれていて、我が子が「ちゃんとできていない」場面を目撃した瞬間に、それが怒りとして出てくることがあります。
心理学ではこれを「インナーチャイルド」と呼んだりします。要するに「当時の自分がまだそこにいる」ということです。
子どもに怒鳴ってしまった瞬間、もしかしたらさちこさんは子どもに怒っているのではなく、昔の自分の傷が反応してエスカレートしてしまったのかもしれません。
「あ、今、自分がされたことを繰り返してるかもと、少し距離を置いて自分を見られるようになると、怒りの出どころが少し変わっていきます。すぐには難しくても、そういうふうに怒っている自分を俯瞰して見るというか、違った視点があることを知っておいてほしいです。
では、実際にどうするか。
「怒鳴らないようにがんばる」よりも、「怒鳴らなくて済む状況を作る」ほうが先です。
そのために、一つだけ試してほしいことがあります。
子どもの「いい行動」に声をかけることを、意識的に増やしてみてください。これは、そうです、毎回お伝えしている「肯定的注目」です!
「宿題やってるね」「おもちゃ片付けてるね」「ごはん食べてるね」——褒めなくていい。ほめようと思うとストレスに感じるから、ただ、子どもがやっていることをそのまま声に出す。実況中継するだけでいい。
これは研究で分かっていることで、子どもの行動をありのままナレーションするだけで、認められた!と感じてそれは褒めてもらったのと同じ効果があります。「見てもらっている」という感覚が、子どもの気持ちを安定させていきます。
そして子どもが安定してくると、親が怒鳴らなければいけない場面が、少しずつ減っていきます。怒鳴らないようにがんばるのではなく、怒鳴る必要がない状況を少しずつ作っていく。その積み重ねが、やがてループを断ち切っていきます。
それから、子どもへの「即座に叱って止めるべき行動」と「叱らなくてもいい行動」を分けて考えてみてください。
人を傷つける、物を壊す、危険な行為——これはすぐに止めなければいけない。でも、それ以外の「困った行動」の多くは、怒鳴らなくても、関わり方の工夫で少しずつ変えていける行動です。
「全部に怒らなければいけない」と思っていると、毎日が消耗戦になります。「これは止めなければいけない。でもあれは今すぐ怒らなくていい」と仕分けできるようになるだけで、心の余裕がずいぶん変わります。この辺は、行動を「増やしたい」「減らしたい」「やめさせたい」の3つに分け、増やしたい行動を注目しましょうという話なのですが、今度追加でこのあたりのお手紙お送りします。他にも、どうしても怒鳴ってしまう親にお勧めする「バウムリンドの子育て養育スタイル分類」の話も!
最後に、自己嫌悪についてもう一つだけ。
怒鳴ってしまった夜に自己嫌悪する、その気持ちを否定しません。でも、自己嫌悪をずっと抱えて次の日に向かうと、心がすでに疲れた状態でスタートすることになります。
「今日は怒鳴ってしまった。でも今日も私はこの子のそばにいた。わが子の寝顔を見てほっこりできた」…こんな感じの気持ちで、眠りについてほしい。
叱ったりイライラしていても笑顔を見せられる母親でいる工夫はたくさんあります。まだこれからも紹介します。
少しでも親がそばにいてくれる時間は、子どもにとってとっても大切です。
さちこさんが、自己嫌悪に陥る時間がを少しでも軽くなりますように。
ママ友ドクター より
P.S.
次回も、私のもとへ届いたママたちの悩みにお返事を書く形で、子育てに役立つコツや話をお届けしていきます。
次回のお手紙は、「バウムリンドの分類と子どもの行動3分類とは?」という形で、私の本から抜粋してお届けしますね。
今回は【自己嫌悪・怒り】関連のお手紙でした。この一つ前のバックナンバーも、きっと参考になるはず。まだ読んでいない方はぜひ、リンクから。
また、the Letter最初の配信「前略、西村佑美さま」は、私自身の実体験をもとにした自伝的な手紙シリーズです。シリーズでお届けしていきますので、あわせてどうぞ。
📮 バックナンバーはこちら ▶ https://mamatomodoctor.theletter.jp/
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