「厳しくする?自由にさせる?どこまで寄り添うの?!」-知っておきたい4つの子育てスタイル
📮ママ友ドクターからの手紙Vol.9
Dear Parents、
発達専門の小児科医の西村佑美です。今日はお悩みに対するお手紙ではなく、コラムをお届けします。ぜひ最後まで読んで参考にしてくださいね!
子育てをしていると、必ずぶつかる迷いがあります。
「もっと厳しく怒るほうがいいんじゃないか」
「いや、子どもの気持ちを尊重して、自由にさせるべきだろうか」
診察室でも、講演会でも、あるいは私の主宰するオンラインコミュニティ「子ども発達相談アカデミーVARY」のライブ相談でも、本当に多くのママやパパから聞く言葉です。そして、ほとんどの親が、その日の自分のコンディションによって、揺れて悩んでいます。
朝は厳しく、夜はつい甘く…。あるいはその逆。一貫性が持てなくて、自分を責めてしまう。
今日は、その迷いに地図を渡してくれるような考え方をご紹介します。
発達心理学者ダイアナ・バウムリンドが提唱した、4つの養育スタイル分類です。
■ 大事なのは「よい親・悪い親」を分けることじゃない
最初にお伝えしたいことがあります。
この分類は、親を「良い親・悪い親」に分けるためのものではありません。
そうではなく、「子どもに伝わっている関わり方」を、2つの視点から見直すための地図だと思ってください。
その2つの視点とは、こうです。
縦軸:あたたかみ(子どもの気持ちを受け止められているか)
横軸:要求・制限(必要なルールや限界を示せているか、境界線)
この2軸の組み合わせで、4つのペアレンティング(子育て)スタイルが生まれます。

発達特性に悩んだらはじめに読む本 西村佑美著(Gakken)
①独裁的~あたたかみは低く、要求制限は強い
「だめなものはだめ」「親の言うことを聞きなさい」が口癖になりやすい関わり方です。
ルールや要求はしっかりあるけれど、子どもの気持ちや事情を聞く余地が少ない。
短期的には子どもが従うこともあります。怖いから、しぶしぶ言うことを聞く。でも、その代償として子どもは「自分で考える力」「失敗したときに相談する力」が育ちにくくなることがあります。
このスタイルが続いた子は、大人になってから「失敗を極度に恐れる」「人の顔色をうかがう」「自分の意見が言えない」といった姿に繋がりやすい、と研究では指摘されています。
発達相談ライブでも、こんな相談がありました。
——小学4年生のADHD・ASD傾向のある男の子。塾の宿題で間違いを指摘されると感情的になり、教科書を乱暴に扱う。親が説明しても聞かず、見直しができない。
このお母さんは決して怒鳴りつけるような厳しい子育てをしているつもりではないんです。でも、お子さんに制限をかけたり指示に従わせ、できていないところを指摘するタイプでした。「○○はしてはダメ」「○○を間違えているよ」など。お子さんが「間違い=自分の存在の否定」と受け取ってしまう背景には、「正しくないと許されない」という空気を、どこかで吸い込んでしまっている可能性があります。勉強の場面以外では自己肯定をしにくい環境にあるのかもしれません。このケースでは、「教科書投げないで」などを毎回説明するのではなく、まずは、ペアレントトレーニングでも大切にする「肯定的注目」を意識し、子どもが「小さな頑張りも親が見てくれている」と意識して自己肯定する力が少しずつ上がっていくのを優先します。ちなみに、独裁的スタイルは世代をまたいで引き継がれやすい、と言われています。自分の親が怒鳴り厳しく接してくるタイプだった人は、自分も無意識に怒鳴ってわが子に要求制限をかなりかけてしまう。心当たりありませんか…?大丈夫、怒鳴ってしまうのは「あなたが悪い」のではなく、「人は自分が受けた子育てを再現してしまう」というメカニズムが影響しているのです。だから、変えていけます。そう知っておくだけで、自分を責める気持ちが少し変わるはずです。
②許容的~あたたかさは高いが、制限があいまい
真面目で一生懸命なママやパパたちが、いちばん陥りやすいスタイルがこれです。とくに、独裁的スタイルのように、制限をかけられ、怒られ、厳しく育てられた経験を持つママやパパほど、真逆のスタイル、すなわち許容的スタイルをとろうとしがち。
子どもの気持ちを受け止める。なんでもやらせてあげる。
「やってみたいんだね、いいよ」「やりたくないんだね、無理しなくていいよ」
「悲しいんだね、もう我慢しなくていいよ」と寄り添える。
それ自体は素晴らしいことなんですが、ルールや限界設定があいまいになりがちです。
「やりたくない」と言われたら「じゃあやらなくていいよ」、
「お菓子買って」と言われたら「今日だけ特別ね」。
親子関係は一見穏やかに見えるかもしれません。でも、子どもの側から見ると、「どこまでがよくて、どこからがダメなのか」がわからない世界に住んでいることになります。
その結果、小さいうちはのびのびと育った子供だったのに、すこしずつ生活習慣が乱れたり、待つことができない、気持ちの切り替えがうまくいかない、といった困りごとが出てきます。そして、自分の気持ちや要求を通すために、わざと大きな声を出したりわがままを言ったり、癇癪を起こして親を支配しようとしたり、思い通りにならないと反抗的になったり…。
そしてここからが、いちばん多くの親が苦しむパターンなのですが、そんなわが子の様子を見ていると、だんだん腹立たしくなってきて、ある日突然、親が独裁的なスタイルで爆発して怒鳴ってしまう。「私が子どもの時は、こんなに好きなことをさせてもらってなかったのに!」と。
この「許容的←→独裁的」の行ったり来たりが、子どもをますます不安定にします。
子どもからすると、自分の親が優しいのか怖いのかわからない。だから、ずっと不安を感じて安心できない不安定な状態で過ごすことになる。「いつもの感じならOKだった行動が、今日は急に怒られる」というのは、子どもにとってはキツイ体験です。
「優しくしていたつもりなのに、突然爆発してしまった」——そう自分を責めているお母さんがいたら、これは「あなたの意志が弱いから」ではなく、「まじめすぎて許容的と独裁的のあいだで揺れているから」だと知ってください。
③関係欠如的
子どもへのあたたかさも制限も不足している状態です。応答も、見守りも、ルールも、すべて不足している状況です。程度によってはネグレクト、とも表現されてしまうスタイル。ただ、ここで大事なのは、親を責めないこと。関係欠如的になってしまう背景には、忙しすぎる、孤立している、親自身が疲弊している、心身の不調がある、といったことがあります。そして、生物学的に「子ども1人を育てるには2人以上の大人が必要」と言われています。それを一人で背負っている時間が長いと、心身ともに削られていくのは当然のことです。だから関係欠如的なのは「ダメな親」のサインではなく、「家庭だけで抱え込んでいる、助けが必要」というSOSのサインです。地域の保健センター、ファミリーサポート、保育園の先生、信頼できる友人、どこでもいいから、つながり先や相談先を増やしてほしい。私がママ友ドクター®プロジェクトを始めたのも、そういった想いから2020年にスタートしています。
④権威的── 目指したい関わり~あたたかさも制限も、どちらもある
これがバウムリンドが「望ましい」とした関わり方です。
子どもの気持ちを受け止めながら、必要なルールや制限、境界線も示す。ダメなものは、確かにダメなのです。子どもには、社会ルールや協調性を教えていく必要があるから。でも、同時に心も育てていかないといけません。
たとえば、「もっと見たかったんだね」と気持ちは認めたうえで、 「でも今日はここまで。明日は先に見る時間を決めようか」と伝える。
「行きたくなかったんだね」と受け取ったうえで、 「その気持ちはわかった。じゃあ、どうすれば行けそう?」と一緒に考える。
「嫌なんだね」と気持ちに寄り添い、「それなら、どこまでならできるか一緒に考えよう」と言える。
権威的な対応をしてくれる親や大人に対して子どもは信頼します。そして、一緒に解決することを学んでいくので、少しくらいは頑張ってみようとか、やってみようという気持ちが育っていきます。
(ここに、前述の「肯定的注目」を同時に意識できると完璧!詳しくは、私の本を参照してくださいね)
研究では、この権威的な関わりは、子どもの社会性、自尊感情、自己調整力、学業面など、さまざまな良い発達アウトカムと関連していることが報告されています(Baumrind, 1966; Kuppens & Ceulemans, 2019)。
「権威的」という言葉、少し堅く聞こえますよね。私はいつもこう言い換えています。
「リーダーシップをとる親」をイメージしてください。
リーダーシップのある人って、メリハリがあって、気持ちは分かったうえでルールや規則はきちんと示す。そして困った時には手伝ってくれる。怒鳴り続けるリーダーのチームが機能しないのと同じで、怒鳴り続ける子育てはうまくいきません。でも何でも許すリーダーも機能しない。温かくて、でも芯がある。これが権威的な関わりです。子どもへの声がけや態度に困ったら、「優秀なリーダーならどうする?」とイメージすると、たぶん自然とうまくいくようになると思います。
大事なのは「いつも完璧な親」ではない
ここで一つ、はっきりお伝えしておきたいことがあります。
「権威的な関わり」とは、「いつも穏やかで完璧な親になりましょう」という意味ではありません。
大切なのは、子どもの気持ちを受け止めることと、生活に必要な枠組みを示すこと——この両方があることです。
完璧にできなくていい。怒鳴ってしまう日があってもいい。怒鳴ってしまったら、落ち着いたときにちゃんと子供に謝って言い過ぎたことを反省し、親も完ぺきではないという事を教えればいいのです。「気持ちは大事にする。でも越えてはいけない線は守る」というスタンスを、子育て全体の土台にしてもらえると、きっと多くの場面でうまくいくと思ってます。
■ 発達特性のある子には、もうひとつのコツがある
発達特性のあるお子さんを育てているなら、もう一歩、知っておいてほしいことがあります。
同じ「権威的な関わり」をするにも、ちょっとした工夫が必要なんです。
① ルールを「言葉だけ」ではなく、見える形にする
「やめなさい」「順番だよ」と言葉だけで伝えるより、絵カードや写真、時計の針、文字で書いた約束など、視覚的に見える形にしたほうが伝わります。発達特性のある子は、視覚優位タイプの子が多いからです。
② 叱る前に、環境を整える
「触っちゃダメ」と言い続けるより、触られたくないものを最初から見えない場所に置く。あるいは触りたい衝動に駆られている好奇心は受け止めつつ「気になったものはまずは見るだけだよ!触らず観察するんだよ!」と教えておくと実はうまくいきます。「片付けて」と毎日言うより、片付けやすい収納の仕組みを作る。叱る回数は「環境調整」と「行動を『増やしたい行動』『減らしたい行動』『やめさせたい行動』の3つにわける」でグッと減らせます。(これもペアトレの基本ですが、私の本でも紹介しています!)
③ できなかったことを責めるより、「どうすればできる形になるか」を一緒に考える
「なんでできないの」と問い詰めるのではなく、「どうすればできそうかな?」と相棒として考える。これが特性のある子に対する「権威的な関わり」の核心です。子どもの行動には必ず理由やきっかけがあるもの。単に「特性があるから○○をやったんだ」ととらえると、解決策が見えてこないことが多々あります。厳しさを増やすことではなく、子どもの行動の理由を考え、伝わる形で「安心」と「見通し」を渡す=教えることが効果がある方法です。
最後に
子育てに必要なのは、支配でも放任でもありません。
「あなたの気持ちは大切にする。でも、あなたが安全に育つための枠組みは大人が用意する」
この両方があるとき、子どもは安心して、自分で考え、少しずつ社会の中で生きる力を育てていきます。
そして、自分がいま4つのどのスタイルに偏りやすいかを知っているだけで、声かけは少しずつ変わっていきます。
「あ、今わたし、許容的に流されてたな」 「いま、独裁的で爆発しそうだったな」
そうやって自分にツッコめるようになるだけで、一歩一歩、楽しくて、うまくいく子育てができるようになっていきます。人間だもの、完璧でなくていい。ただ、気づいた瞬間に、戻ればいいのです。
発達専門小児科医 ママ友ドクター®ゆみせんせい より
参考文献
Baumrind, D. (1966). Effects of authoritative parental control on child behavior. Child Development, 37(4), 887–907.
Maccoby, E. E., & Martin, J. A. (1983). Socialization in the context of the family: Parent-child interaction. In Handbook of Child Psychology.
Kuppens, S., & Ceulemans, E. (2019). Parenting styles: A closer look at a well-known concept. Journal of Child and Family Studies.
Sanvictores, T., & Mendez, M. D. (2022). Types of Parenting Styles and Effects on Children. StatPearls/NCBI Bookshelf.
西村佑美(2024).『発達特性に悩んだらはじめに読む本』学研.
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P.S.
次回のコラムは「AI時代の子育て——3児のママで小児科医が思うこと」を予定しています。お楽しみに。
P.S.2
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