「夏休みが怖い」と思ってしまうあなたへ
📮 ママ友ドクターからの手紙 Vol.10
ちょっとだけお久しぶりです、皆さん7月どうお過ごしですか?今日は七夕ということで、普段の手紙形式ではなくコラムをお届けする日にしました。
私は仙台出身なので、七夕と言えば旧暦の8月7日なのですが、とはいえ「7」がそろう今日は、ちょっぴり特別な日に感じます。願い事、ひとつだけ叶うなら、皆さん何を書きますか?
私は遠くにいる大切な恩人に会いたいです。
幼稚園時代に毎年宿題で子どもたちが持ち帰る七夕の短冊に願いごとを書かせながら、私の頭に浮かんでいたのは、別のことでした。
あと2週間で、夏休みが始まる。
40日間。給食なし。毎日3回の「ごはん何?」。仕事は減らないのに、3人ンお預け先のパズルは埋まらない。カレンダーを見て、ため息が出ました。
「わかる~!」ともし今、あなたも同じため息をついていたら——今日はその気持ちに、小児科医として、そして3人育てている母として、はっきり言わせてください。
夏休みが憂鬱なのは、あなたの愛情が足りないからではありません。
「子どもと過ごせる貴重な夏!」というキラキラした言葉がSNSに並ぶ季節です。それを見て「楽しみだと思えない私は、母親としておかしいのかな」と、こっそり自分を責めているお母さんに、私は毎年たくさん出会います。診察室でも、VARYのライブでも、7月になると必ずこの話になります。
でも先に結論を言うと、これは心の問題ではありません。体力と仕組みの問題です。今日はそのカラクリと、夏を「気合い」ではなく「作戦」で乗り切る方法を、まとめてお届けしますね。
そもそも、夏休みは「大人ひとりの設計」として無理がある
冷静に、夏休みにお母さんが引き受けるタスクを並べてみましょう。
40日間、下手したら毎日三食を用意する。暑さの中で、体力の有り余る子どもの遊び相手と安全管理をする。宿題と自由研究の進み具合を管理する。生活リズムの崩れを食い止める。きょうだいゲンカを仲裁する。それでいて、家事と仕事は普段どおり。
これ、ひとつひとつは「よくある家事育児」に見えますが、全部を同時に、40日間、休みなしでやるんです。もし職場でこの業務量を提示されたら、労務管理の問題になりますよね。
つまり、夏休みを前に気が重くなるのは、感受性が正常に働いている証拠。状況を正しく見積もれているからこそ、ため息が出るんです。私はむしろ、そういうお母さんにこそ拍手を送りたいくらいです。
白状すると、私自身、夏休み前は毎年身構えます。3人分の昼ごはんを想像しただけで、そうめんの茹で時間を計算し始めます(笑)小児科医でも、こうなんです。だから大丈夫。あなたは全然、おかしくない。
ここからは、わが家と私が主宰する子ども発達相談アカデミーVARYのママたちの実践から生まれた「4つの作戦」をお話しします。
作戦①:カレンダーには、あなたの余白を「先に」書き込む
夏休みの計画を立てるとき、多くのお母さんは子どもの予定から埋め始めます。ラジオ体操、プール、旅行、宿題のスケジュール……そして気づけば、自分の休む時間はどこにもない。
順番を、逆にしてください。
最初に書き込むのは、あなたが息をつける時間です。ひとりでコーヒーを飲む30分。学童や祖父母、ファミリーサポートに頼る日。パパに全部任せて出かける半日。なんなら「今日は何もしない日」——それを先にカレンダーに入れてから、残りの枠に子どもの予定を配置していく。
「親なのに、そんなの欲張りじゃない?」と思った方へ。私が母たちにずっと伝え続けている言葉があります。
親は、欲張ってもいいんだよ。
お母さんの余力は、子どもの安全基地の土台です。土台が削れたまま40日走ると、8月半ばに必ずガス欠が来て、些細なことで爆発してしまう。そして「怒鳴ってしまった……」と自己嫌悪する。この負のループを断つには、根性ではなく、倒れない設計が必要なんですね。ペアレントトレーニングの大原則「親が変わることが先」は、夏休みでは「親が休むことが先」と読み替えてください。
作戦②:生活リズムは「朝だけ死守、あとは2時間ルール」
「夏休み中も規則正しい生活を!」と気負うと、それ自体がお母さんの仕事を増やします。そこで、医学的な線引きをお伝えしますね。
体内時計の研究から言えるのは、普段の起床・就寝時刻から2時間以内のずれなら、休み明けに修正が可能だということ。逆に2時間を超えるずれが常態化すると、体内時計そのものがずれて、休み明けの立て直しがぐっと大変になります。
だから、守るのはこれだけでいいんです。
朝は、普段+2時間以内に起こす(カーテンを開けて朝の光を浴びるだけでも体内時計は整います)
夜更かしした日があっても、翌朝で帳尻を合わせる
完璧な時間割は作らない
毎日きっちり同じ時間じゃなくていい。「2時間の幅の中に収まっていればOK」と考えると、管理がずっとラクになりますよ。ちなみに睡眠は、子どもの心の安定に直結します。夏休み明けにぐずぐずが増える子の多くは、心の問題の前に、単純な睡眠不足だったりするんですね。
作戦③:昼ごはんのハードルを、公式に下げる
夏休みのお母さんを最も消耗させるのは、実は「毎日3回のごはん」です。ここは開き直りではなく、方針としてハードルを下げましょう。
私の提案は「夏の昼は、食事ではなく補給」と家庭内で宣言してしまうこと。そうめん3日連続、OK。冷やしうどんとバナナ、立派な昼食。ワンプレートに常備菜をのせるだけ、満点です。栄養は1食単位ではなく、2〜3日単位で帳尻が合っていれば大丈夫、というのが小児科医としての本音です。
そしてここに、子育てのチャンスをひとつ仕込めます。「増やしたい行動」をお手伝いで育てるんです。
行動には「増やしたい行動」「やめさせたい行動」「減らしたい行動」の3分類がある、という話を以前しましたね。夏休みは時間があるからこそ、「増やしたい行動」を育てる絶好の季節。おにぎりを自分で握らせる、そうめんの薬味をちぎってもらう、麦茶を注いでもらう。
そのときの声かけは、褒めようと頑張らなくていいんです。実況中継でいきましょう。
「お、海苔を巻いてる」「麦茶、こぼさず注げたね」
行動をそのまま声に出すだけで、子どもにとっては立派な肯定的注目になります。お昼づくりが「お母さんの業務」から「子どもの経験の場」に変わると、同じそうめんでも、意味がまるで違ってきますよ。
作戦④:メディア・デバイスは「ゼロを目指さず、順番を決める」
40日間、動画もゲームもなしで乗り切ろうとするのは、正直、現実的ではありません。乳幼児メディアアドバイザーとしての私の方針は、「すぐスマホ」を避けること、つまり渡す前に何かの順番を挟むことです。
わが家で実際にやっている、おうち時間や外出時の「暇つぶし作戦」の順番はこうです。
まず、子どものスタメンのおもちゃで飽きるまで遊ぶ
100円ショップで仕入れた目新しいネタ(シール、迷路、ぬり絵、スライムなど)を出す。1つ5分しかもたなくても、5つあれば時間が稼げます
ネタが切れたら絵本とおやつタイム
アニメや映画を「一緒に」観る
最後の手段で、スマホの動画
ポイントは、5番から始めないこと。それだけです。順番の途中で夕方になれば、その日は勝ちです(笑)。テレビや動画を観た日があっても、自分を責めないでくださいね。ゼロにすることではなく、最初の一手にしないことが目標です。
夏の終わりの話を、少しだけ
まだ7月ですが、ひとつだけ先回りしてお伝えさせてください。
夏休みの終わりごろ、「学校に行きたくない」という言葉が出てくることがあります。長い休みのあとに緊張モードへ切り替えるのは、大人の連休明けと同じで、子どもにとって本当に大変なこと。もしその言葉が出たら、「そんなこと言わないの」と打ち消さずに、まず「そうか、行きたくないんだね」と、そのまま受け止めてあげてください。オウム返しでいいんです。気持ちには寄り添う——対応の入り口は、それだけで十分です。
そのためにも、8月末のあなたに余力が残っていることが大事。だから作戦①に戻るんですね。全部つながっています。
完璧な夏じゃなくていい
最後に、希望の話を。
夏休みは、お母さんにとっては体力戦ですが、子どもにとっては持てあますほどの時間を「好き」を深掘りできる、一年でいちばん贅沢な季節でもあります。わが家の長男は、ゴッホに惚れ込んで、自由研究を2年連続ゴッホで通しました。時間割のない40日間だからこそ、あの子の「好き」はあそこまで育ったんだと、今は思います。独特のこだわりや型破りな発想は、AIが正解を出してくれる時代にこそ、人間の子どもの強みになります。
だから、立派な体験プログラムを組めなくても大丈夫。子どもがセミの抜け殻を集め続ける夏でも、段ボール工作で家じゅうを散らかす夏でも、それはちゃんと「その子の夏」です。
完璧な夏休みじゃなくていい。ラジオ体操に行けない朝があっていい。お昼が3日連続そうめんでも、いい。イライラして声を荒げてしまう日があっても、あなたの愛情は1ミリも減りません。
夏休みが憂鬱なのは、愛情不足じゃなくて、体力と仕組みの問題。
そう唱えて、どうか肩の力を抜いて7月を迎えて下さいね。
これから暑さが本番になります。お子さんの水分補給と同じくらい、あなた自身の休息も、忘れずに。
短冊にひとつ枠が余っていたら、子どもの願いごとの隣に、あなたの願いごとも書いてみてね。ことばにしないと、願いは叶わないのだから。
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P.S. 次回はまた、私のもとへ届いたママたちの悩みにお返事を書く形でお届けします。 次回のお手紙は、「息子の作り話に、先生まで巻き込まれました」というママに送る手紙を予定しています。他の連載もお楽しみに。
今回は【夏休み・親のマインドケア】関連のお手紙でした。バックナンバーもあわせて読んでもらえると嬉しいです。
あと、7月19日に大阪、7月31日・8月1日は沖縄で親子イベント・相談会開催です!
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ママ友ドクター 西村佑美

AIではない本物の美しいアジサイの池に癒されました (岩手一関あじさい園より)
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