「うちの子、発達障害かもしれません。どうしたらいいですか?」2歳6か月男の子ママより

発達障害かもしれない!と思ったときにどう考えていくか、発達専門の小児科医・ママ友ドクターからのお手紙にしてみました。
ママ友ドクターゆみ先生(発達専門小児科医・西村佑美) 2026.06.09
誰でも

前回は、ママ友ドクターのバースディ月間ということで特別連載を「白衣を脱いでママ友ドクターになった話」をお届けしたところ、初回からとても好評だったため、特別連載はもう少しをかけ複数回に分けてお届けすることになりました。

(なので特別連載2回目の公開は少し先ですお楽しみに!)

📬 ママ友ドクターからの手紙 ── Vol.07

「うちの子、発達障害かもしれません。どうしたらいいですか?」

***

ゆみ先生へ

2歳半の男の子のママ、まいと申します。

恥ずかしいのですが、いま私、ものすごく動揺していて、誰にも相談できないのでお手紙にしています。

息子のことです。

言葉が遅くて、まだ意味のある単語が3つくらいしか出ていません。「ママ」もまだ言ってくれません。目もあまり合わなくて、名前を呼んでも振り向かないことが多い。公園に行っても他の子に興味を示さず、ひたすら砂を触っている。

ネットで検索してしまったのが間違いでした。「自閉症 サイン」と打ち込んだ瞬間、当てはまる項目がいくつもあって、頭が真っ白になりました。

夫は「男の子だから遅いだけ」と気にしていません。お義母さんは「私の息子も3歳まで喋らなかったわよ」と言います。1歳半健診では「もう少し様子を見ましょう」と言われました。

でも、私はずっと違和感を感じていて。母親の勘というか……。

「発達障害かもしれない」と思った瞬間、急に息子のことが「かわいそうな子」に見えてしまって、そんな自分にも嫌気がさしています。

私はこれから、どうしたらいいのでしょうか。

まい より

***

まいさんへ

勇気を出して打ち明けて下さり、ありがとうございます。

手が震えながら書いてくれたんじゃないかな、と思いました。誰にも相談できないまま、ネットの海でひとり溺れそうになっている。そういうママを、私はたくさん見てきました。

まず最初に、いちばん大事なことをお伝えします。

「発達障害かもしれない」と気づけたこと、それ自体は、決して悪いことではありません。

むしろ、ちゃんと息子さんを見てきたお母さんだからこそ、気づけたことです。
「母親の勘」と書いてくれましたよね。それは勘ではなくて、毎日いちばん近くで観察してきた人の、確かな観察眼。

旦那さんやお義母さんが「気にしすぎ」と言うのは、悪気があるわけではありません。

ただ…ご家族は、まいさんと同じ目線で見えていないだけです。
あなたの違和感は、軽んじていい類のものではありません。

ここで一つ、ぜひ知っておいてほしい言葉の話があります。

実は今、「発達障害」という呼び方は、医療や教育の現場で少しずつ変わってきています。

最新の診断基準(DSM5-TR,ICD11といったもの)では、これまで「発達障害」(~障害)という呼び方ではなく「神経発達症」(~症)と呼ぶようになりました。

今でも、発達障害という言葉を使い続ける専門家やメディアも多いですが、この正式名称の変化って、とても大きな意味のある変化です。

「障害」という言葉は、どうしても「壊れている」「劣っている」というイメージを含んでしまいます。ネガティブだったり、不可逆的なイメージが強かった。

だから多くのお母さんが、「障害」と聞いた瞬間に絶望してしまう。
私も自分の長男の言葉の遅れがあったとき、発達「障害」ではない!と抵抗したほど。
多くの専門家や支援・サポート専門家も、「発達の障害」という表現が、実際の子供たちを表していないばかりか、親を含めた周囲に対してもあまり良い影響を与えないという意見は多かったようで、その声が名称の変更に繋がったと言われています。

脳の発達のしかたが、多数派とは違う「特性」を持っている。
少数派、、かもしれないということなんです。(少数派かなあ?と思って育てていたらいつのまにか多数派になじんでしまったりもします)

「神経発達症」という呼び方は、「発達の一種」「脳の多様性」の状態という、新しい言葉です。

まいさんも、もし「発達障害」という言葉に押しつぶされそうになっているなら、ぜひ今日から「神経発達症」「発達特性」という言葉に置き換えてみてください。
同じ目の前の子への見え方が少し変わると思います。

どうでしょうか?

もう一つ。これからの時代の話をさせてください。

AI時代、と言われる時代に私たちは入りました。

ChatGPTが文章を書き、画像を生成し、計算をし、コードを書いてくれる時代。

「ちゃんと授業を聞いて」「丁寧に書き写して」「決められた通りにできる」——昭和や平成の時代に「優秀」とされてきた能力の多くを、AIが代わりにできるようになってしまいました。

では、これからの時代に必要な力は何か。

それは、AIにはない「人間らしさ」です。

独特の発想。常識にとらわれない発見。深い感性。「みんな同じ」とは違う、その人だけの視点。AIが膨大なデータの「平均値」しか出せないのに対して、人間にしかできない「ズレた角度から物を見る力」です。
私の大好きな表現なのですが「予想の斜め上を行く」...そんなことができるのが人間だったりするわけです。

そしてここからが大事なのですが——

発達特性のある子どもたちは、まさにこの「ズレた角度」「予想の斜め上をいく」力を持っている子が多い!

砂や水をひたすら触っている子は、その感触や、光の反射を、誰よりも繊細に味わっている子です。

ドアを開け閉めしている子は、ちょうつがいを観察していました。

エレベータの仕組みが気になって仕方ない子もいました。

好奇心が止まらなくて、部屋の中をずっと探検している子もいました。

昆虫や植物が大好きで何時間も観察したり…

AIには絶対にできない「人間のおもしろい体験・発想」をするのが特性のある子ども達だと思っています。。

普通じゃないこと。「他の子のように」できないこと。

これらは、これからの時代においてハンディキャップではなく、強みになる可能性を秘めています。

私自身、自分の長男が発達特性を、最初は受け入れられませんでした。

「定型発達児のお母さんが羨ましい」と思った時期もありました。

でも、今は違います。

息子は中学生になりました。おしゃべりで、やさしくて、感性が豊かで、発想が独特で、誰も思いつかない切り口で物事を考える。「その視点、どこから来るの?」と笑ってしまうことが毎日あります。小学生の頃からフィギュアが好きで、4年生くらいの時にYouTubeから新作の情報を手に入れていた頃、中国語を習いたいといったのですが理由を聞くと、「今、中国製の○○というメーカーのギミックがすごい。中国のトイザらスでおもちゃを買いたいから」と言いました。「ママ、これ取り寄せて」ではなく、現地での実際に交流する楽しさまで想像を膨らませていた結果、中国語をやりたいなんて、彼らしい理由でした。

何がどう活きて行くかわかりませんが、面白い人材になる。私は今、そう思っています。

今、まいさんに知ってほしい3つのこと

① 早く気づいた人ほど、子どもを伸ばすチャンスが多い

「神経発達症かも」と気づくことは、不安の入り口に見えるかもしれません。でも実は、子どもの伸びしろを最大化する入り口でもあります。

特性のある子にとって、いちばん大事なのは親のマインド変化も含めた「環境調整」と「関わり方」です。1歳半、2歳、3歳の今のうちに、その子に合った関わり方を始められた子は、ぐんと伸びます。

逆に、「男の子だから」「個性だから」と気づきが遅れてしまうと、その分、子どもが「うまくいかない経験」を積み重ねてしまう時間が増えます。気づけた今のタイミングは、息子さんにとってもチャンスなんです。

② 「診断」と「特性に合った関わり」は別物

多くのお母さんが、「神経発達症かもしれない」と思った瞬間に、「診断を受けるべきか、受けないべきか」という二択で悩み始めます。でも、本当に大事なのはその前の段階です。

診断があるかないかに関わらず、息子さんに合った関わり方を始めてください。

たとえば、目が合いにくい子には、「アイコンタクト+笑顔」を意識的に増やす。一瞬でも目が合った瞬間に口角を上げて、目を細めてニコッと笑う。「目が合うといいことがある」を毎日積み重ねる。(これは、私の本で丁寧に解説していますね!)

言葉が遅い子には、子どもがやっている行動を実況中継してあげる。

「砂、触ってるね」「車、動かしてるね」。
わざわざ何でも褒めなくていい。見たままを声に出すだけで、肯定的注目をしつつ、子どもが自然と言葉(砂、触っている、くるま、動かす…等)を覚えるチャンスにもなります。

これは、診断があってもなくても、すべての子に有効な関わり方です。

③ 「様子を見ましょう」を、ただ待たない

1歳半健診で「もう少し様子を見ましょう」と言われたとのこと。これは多くのお母さんが言われる言葉です。

でも、「様子を見る」というのは「何もしないで待つ」ことではありません。

「様子を見る」期間にも、お母さんができることはたくさんあります。地域の保健センターでの発達相談に申し込む。療育に行ける自治体なら、まずは見学に行ってみる。発達外来の予約は半年待ちのところもあるので、迷っているなら今日電話してみてください。

予約を入れて、当日キャンセルしてもいい。動き始めることが大事です。

もちろん、私もいつでもご相談にのります!

まいさんが今いちばん怖いのは、「もし本当に発達障害だったら」という未来の不安だと思います。

でもね、まいさん。

私自身、医師である私ですら、その事実を受け入れるのには抵抗がありました。そのあとも結局うちの子は「発達障害だった」なんて感じていません。

感性が豊かで、発想が独特で面白い。何となく友達にも好かれているのは、嘘がつけない特性ならでは。あの頃の私が想像していた未来とはだいぶ違いますが、心の底からわが子が大好きです。

「もしも」の未来は、あなたが今思っているほど暗くありません。むしろ、早く気づけた今からの関わり方次第で、強みになる部分をたくさん見つけていく子育てライフのスタート。

だから、どうかひとつだけ提案させてください。

今日の夜、息子さんが寝る前に、一瞬でも目が合った瞬間に、口角を上げてニコッと笑ってみてください。言葉はいりません。

息子さんは、あなたのその笑顔を、ちゃんと受け取ります。

「発達障害かも」という不安を抱えながらでも、できることがある。むしろ、その不安があるからこそ、今日から始められる関わりがある。
諦めたくない!という心の強さが生まれてくる。

まいさん、ひとりじゃありません。同じ道を歩いてきたお母さんが、たくさんいます。

私もその一人です。

ママ友ドクター より

***

P.S.

次回も、私のもとへ届いたママたちの悩みにお返事を書く形で、子育てに役立つコツや話をお届けしていきます。(内容は実際に西村が受けた相談例を匿名化し一部編成したものです。)

次回のお手紙もお楽しみに。

P.S.2

今回は【発達障害かもと心配なママへ】のお手紙でした。ママ友ドクターから届くのお手紙形式の発達相談、バックナンバーもあわせて読んでもらえると嬉しいです。

特に、初回配信「前略、西村佑美さま」「白衣を脱いで」シリーズでは、私自身が長男の神経発達特性に気づいてからの実体験を書いていきます。同じ立場のお母さんに、文字を通じて何か届くものがあるかもしれません。

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