「夏休み明け、行き渋りが怖いです」(4歳年中女児)
📮 ママ友ドクターからの手紙 ── Vol.15──
「夏休み明けが怖いです。去年、行き渋りで大変でした」(4歳年中女児)
ママ友ドクターからの手紙 〜Dear Parents〜|8月27日(木)
夏休みも、残り数日。地域によってはもう始まっていますね。宿題の追い込み、お盆疲れ、カレンダーの「始業式」の文字——楽しかった夏の終わりに、そっとため息をついているママやパパたちへ。今日は、新学期を迎えるときに安心な「予防接種」のようなお手紙です。
こんにちは。ママ友ドクターの西村佑美です。
4歳・年中の女の子を育てるのりこさんからのお手紙にお返事します。
ゆみ先生へ
6歳・年長の娘のことで相談させてください。
もうすぐ夏休みが終わりますが、実は今から怖くてたまりません。去年、年中だった娘は、夏休み明けに強烈な行き渋りになりました。始業の日から毎朝玄関で泣き叫び、私の足にしがみつき、先生に引き剥がされるように登園する日が2週間以上。あの朝の光景を思い出すと、残りの夏休みを素直に楽しめません。
娘は場所見知り・人見知りがあり、発達相談で「不安が強いタイプ」と言われています。今年は進級して、1学期の終わりにはようやくクラスに慣れてきたところでした。40日の休みでまたゼロに戻ってしまうのではと思うと、いっそ夏休みなんて早く終わってほしいとさえ思ってしまいます。休み明けに向けて、今からできることはありますか。
のりこより
のりこさんへ
お手紙、ありがとうございます。
「夏休みなんて早く終わってほしい」——世間が夏の思い出づくりに励む8月に、ひとりカウントダウンの恐怖と戦っている孤独。去年の玄関の光景がよみがえる感じ。よく分かります。そして先に言わせてください。去年、毎朝しがみつく娘さんを2週間受け止めて、送り出し続けたのりこさん。あの秋を、親子でちゃんと乗り越えています。今年は、その経験値を持って新学期を迎えられる。去年とは、スタート地点がまるで違いますよ。
夏休み明けの行き渋りは、「リセット」ではなく「電池の仕様」
まず、去年の玄関で何が起きていたのかを、仕組みから見てみましょう。
1学期の数か月、子どもたちは園(学校)という集団の場で、ものすごいエネルギーを使っています。大人で言えば、転職して初月からフル稼働しているようなもの。そこへ夏休みが来て、緊張がゆるみ、家でたっぷり充電される——ここまでは、いいことなんです。問題は明け。40日ゆるんだ心と体を、また「頑張るモード」へ切り替える壁が、どんと立ちはだかる。連休明けでも起きるこの壁が、夏休み明けは40日分、高くなっている。これが夏休み明け行き渋りの正体です。
つまりあれは、娘さんの心が弱いのでも、1学期の慣れが「ゼロに戻った」のでもなく、頑張っていた子ほど反動が大きく出る、電池の仕様・タイプ。不安が強く、切り替えのコストが高いタイプの子は、症状が強く見えるだけなんですね。仕様なら、対策が立ちます。残り時間で「予防」から入りましょう。
休みの残り期間の、予防3カ条
① 生活リズムを、「15分ずつ」学期モードに戻す
夏の夜更かし・朝寝坊、責めなくて大丈夫。ただ、体内時計のずれは行き渋りを確実に悪化させるので、ここから戻します。医学的な目安は、普段の起床・就寝から2時間以内のずれなら修正可能ということ。今2時間以上ずれているなら、今日から15分ずつ起床を前倒しして、起きたらカーテン全開で朝の光を。朝が戻れば、夜の眠気は数日遅れでついてきます。始業の前日にいきなり戻そうとするのが、いちばん失敗するパターンです。あと数日しかない!という場合も、少しでも戻してみましょう。
② 最終日を「宿題と準備の追い込み」で潰さない
大きなお出かけや帰省の予定は、できるだけ前半〜中盤までに。そして最終日とその前日は、おうちで「ならし運転」の日にしてください。持ち物の準備は前々日までに親子で済ませて、最終日は早めのお風呂、好きな夕飯、絵本、早寝。「明日から幼稚園(学校)だね。○○先生、待ってるって」と、軽く、明るく、予告を。
夏の思い出の余韻と、宿題の追い込みと、翌朝への緊張——これを最終日の夜に全部詰め込むと、初日の玄関はいちばん険しくなります。最終日は、助走の日。予定を入れない勇気を。
③ 初日の朝は、「ひとしきり甘える5分」を先に
そして本番の朝。時間に追われて「早くして!」で送り出すと、不安のガソリンに火が付きます。5分だけ早起きして、出発前にぎゅっと抱きしめる時間を、意図的に作ってください。
わが家でも、園から帰るなりぐずぐずとまとわりつく時期に、「今日も頑張ってくれてありがとう、さみしかったね!」とぎゅっとしたら、えーんと泣いて、それでけろっと機嫌が戻ったことがあります。直してほしいんじゃなくて、分かってほしいだけ——夏休み明けの朝も、同じです。「行きたくない」が出たら、打ち消さずに「そっか、行きたくないんだね」とおうむ返し。そして先生に託したら、振り返らず、心の中で親子両方に拍手を。
登園できた日は「泣いたけど、行けたね」「靴、自分で履けたね」と行動の実況中継を。帰宅後は、荷物を降ろしておやつを食べて、親子でぼーっとする「何もしない時間」を30分。夜は「今日、ちょっとよかったこと、ひとつある?」をひとつだけ。この充電サイクルが、翌朝の登園エネルギーになります。
それでも続くときの、ものさしとタイムライン
予防しても、泣く朝はあると思います。数日〜1週間程度の行き渋りは、切り替えの壁を登っている音なので、「気持ちには寄り添う、行動は続ける」で見守って大丈夫。
ただ、ひとつだけ知っておいてほしいことがあります。夏休み明けは、一年でいちばん子どもの心が揺れやすい時期だと言われています。だから、いつもの行き渋りと違うサイン——朝の腹痛や頭痛が何日も続く、夜眠れない、食欲が落ちる、大好きだった遊びを楽しめない——が重なってきたら、それは「頑張らせどき」ではなく「休ませどき」。思い切ってお休みさせて、「今日は充電の日ね」とごろごろさせてあげてください。休ませることは、負けではなく、心を守る治療です。
そして、2週間たっても改善が見えなければ、9月のうちに園(学校)の先生と発達相談の先生に共有を。「様子を見ましょう」のまま秋が深まるのが、いちばんもったいないパターンです。早めに動けば、出口は必ずあります。
去年との違いを、最後にもう一度。去年の娘さんは、初めての園生活で、夏休み明けでした。今年の彼女は、あの2週間を乗り越えた実績のある人です。行き渋りが出ても、去年より短く、軽く終わる可能性が高い。そして隣には、去年より経験値を積んだのりこさんがいます。
残りの休みは、恐怖のカウントダウンではなく、親子の充電期間として楽しんでください。たっぷり充電された子は、壁を越える力も強いんです。玄関で泣く朝が数日あってもいい。先生に託す背中に胸が痛んでもいい。完璧じゃなくていい。
夏の最後の週末は、できるだけのんびりと。新学期、一緒に乗り越えていきましょうね。
ママ友ドクター より
***
P.S.今回は【夏休み明けの行き渋り・予防】関連のお手紙でした。バックナンバーもあわせて読んでもらえると嬉しいです。
📮 バックナンバーはこちら ▶ https://mamatomodoctor.theletter.jp/
***
📮 このメルマガを気に入ってくれたら
毎週のお手紙を応援してくれる方は、サポートメンバー登録をお願いします。
コラムや私生活の話は、サポートメンバーの方だけにお届けしていきます。
***
💬 公式LINE|相談会・ランチ会のお知らせが届きます
📷 Instagram|写真や日常はこちら
🌱 子ども発達相談アカデミーVARY|「ひとりでぐるぐるしちゃう」そんなママ・パパへ
📚 著書「発達特性に悩んだらはじめに読む本(Gakken)」
🌟 その他のSNSはこちら
***
♪ 白衣を脱いで待ってます、お話ししましょう。
ママ友ドクター 西村佑美

すでに登録済みの方は こちら