「うちの子『ごめんなさい』が言えません」(小1男の子ママより)

悪いことしたから謝らせたいのに、断固拒否するわが子にトホホ…となった経験があるママ友ドクター。今回はどんなお返事をするのでしょうか?
ママ友ドクターゆみ先生(発達専門小児科医・西村佑美) 2026.09.17
誰でも

📮 ママ友ドクターからの手紙 ── Vol.17──

「うちの子、絶対に『ごめんなさい』を言いません(小1男の子ママ)」

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9月に入ったらすっかり、朝晩涼しくなり、しかも毎日のように雨模様。校庭からは運動会の練習の音楽が聞こえてきますが、天候の影響もあってか2学期スタートの緊張感と疲れがうすら見え始める時期になりました。

今日のお手紙は、「ごめんなさい」をめぐるお話。 実はこれ、私のもとに届く相談の中でも、とびきり多いテーマなんです。

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ゆみ先生へ

小学1年生の男の子のママです。はじめてお手紙を書きます。

息子は、どんな場面でも「ごめんなさい」が言えません。

先日も、休み時間にお友達とぶつかって相手の子が転んでしまったのですが、「わざとじゃない」「ぼくは悪くない」の一点張り。先生に促されても口を真一文字に結んだまま、最後まで謝れませんでした。家で「なんで謝れなかったの?」と聞いても、「わかんない」しか返ってきません。

家でも同じです。妹のおもちゃを壊してしまったときも、「壊すつもりじゃなかった」と怒り出して、こちらが「とにかくごめんねは言おうよ」と言えば言うほど頑なになっていきます。

「ありがとう」は言えるのに、「ごめんなさい」だけがどうしても出ない。学校の面談でも「気持ちを言葉にするのが課題ですね」と言われました。園のころから発達に少しゆっくりなところがあって、気持ちを言葉にするのが苦手なのは分かっているつもりです。

でも正直、ぶつかった相手の親御さんの顔が浮かんで、「このままだと、謝れない子として嫌われてしまうんじゃないか」と怖くなります。私が甘やかしてきたせいでしょうか。どうすれば、ちゃんと謝れる子になりますか。

かおり より

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かおりさんへ

お手紙、ありがとうございます。

読みながら、思わず「うちも、うちも!」って声が出ちゃいました。 というのも、我が家の3人、揃いも揃って謝らない子どもだったからです。長男も、娘も、末っ子も。「なんでうちの子たちはこんなに謝れないんだろう」と、私も本気で悩んだ時期があります。

だからまず、これだけは先に言わせてください。

かおりさんが甘やかしたせいでは、ありません。 「ごめんなさい」が言えないのは、しつけの失敗でも、心が冷たい子だからでもないんです。

息子さんは、「ごめんなさい」を言えないんじゃなくて、「納得していないことを、口にできない」子なんだと思います。 そしてそれは、実はとても大事な芯を持っている、ということでもあるんですよ。

「ごめんなさい」は子どもにとって自己否定と同じかも?

まず、脳の中で何が起きているのかを、少しだけ一緒に見てみましょう。

私たち大人の世界では、「ごめんなさい」って、わりと軽い言葉ですよね。 とりあえず場をおさめる。角を立てない。日本では特に、謝る文化が根づいているので、「とりあえず謝っておこう」が自然にできてしまいます。世間体が気になったりしますよね。

でも子どもにとっては、子供たちの世界ではまったく違うんです。

子どもの行動には、必ず理由があります。 お友達にぶつかったのも、「早く並びたかった」「一番になりたかった」「後ろから押されて焦った」、本人なりの理由があって起きたこと。妹のおもちゃも、「こう動かしたら面白いと思った」だけかもしれません。

そこに「まず謝りなさい」と言われると、子どもの中ではこうなります。

「ぼくの理由も、気持ちも、全部なかったことにして、『ぼくが悪かったです』と言え、と言われている」

大人が思っている以上に、子どもにとって「ごめんなさい」は、自分の存在そのものを否定する言葉に近いんです。 だから、納得しないと謝れない。 頑固なんじゃなくて、自分を守っているんですね。

「怒る」と「叱る」の違いのお話を、以前のお手紙で触れました。 「怒」は心、つまり感情をぶつけること。「叱」は口、つまり言葉で伝えること。 「とにかく謝って!」と迫ってしまうとき、私たちはたいてい、相手の親御さんの顔や先生の目が浮かんで、焦っている。その焦りごと子どもに渡してしまうと、子どもはますます口を結びます。

謝れない子どもより、こまること

ここで、ちょっとだけ耳の痛い話をさせてください。

「とりあえず謝りなさい」を続けていると、頑固な子はいつまでも謝りません。 でも、もっと心配なのは、賢い子のほうなんです。

賢い子は学習します。「あ、ごめんなさいって言えば、大人は勝手に黙って引き下がるんだ」って。 自分が悪いと分かっているのに、反省の前に「ごめんなさーい」が出てくるようになる。 これ、本当によく見かけます。大人を黙らせるための「ごめんなさい」は、謝れないより、ずっと根が深いんです。なのに、私たちは、そんな子どもの考えていることを想像できずに、謝れたらそれで反省しているとか理解したと思いがちなんですね。

だから、息子さんが「納得しないと謝らない」というのは、そちらの道に進んでいない証拠。 ちゃんと、自分の中で筋を通そうとしている。 それは、これから先、大きな武器になります。

3ステップで、気持ちではなく行動だけを謝らせてみよう!

じゃあ、どうすればいいのか。 私が外来でも、VARYのママたちにもお伝えしている手順を、3つに分けて書きますね。

【ステップ1】まず、本人なりの理由を最後まで聞く

「なんで謝れないの??!」と責めるのではなく、「何があったの?」「そのとき、どんな気持ちだった?」 言葉にするのが苦手な子には、選択肢をやさしく出してあげてください。 「早く並びたかった?」「びっくりした?」「誰かに押された?」 答えが出たら、言い切りで受け止めます。

「なるほど。一番に並びたくて、焦ってたんだね。その気持ち、悪くないよ。ママもそう思うと思う」

ここで「でも、ぶつかっちゃったのはダメだよね(怒)」という台詞はすぐにはつけません。気持ちは、まるごと受け止めます。 ここが、実は一番時間がかかるし、一番大事なところです。

【ステップ2】「行動」だけを、本人に評価してもらう

気持ちを受け止めたあとで、今度は行動を切り分けます。

「気持ちはよく分かった。じゃあ、走ってぶつかっちゃったっていう『行動』は、どうだったかな?」

これは、ママが「それって悪いでしょ」と言うのではなく、本人に言ってもらうのがポイントです。 5秒、待ってください。10秒かかってもいい。 「……ぶつかったのは、よくなかった」と本人の口から出たら、それで大成功です。

【ステップ3】「行動」だけを謝る。返す言葉もセットで

「そうだね。じゃあ、ぶつかっちゃったことだけ、謝っておこうか。わざとじゃなかったんだもんね。『ぶつかってごめんね』って言ったらいいと思うよ」

こうすると、息子さんの中では、こうなります。

「ぼくの気持ちは否定されていない。でも、ぶつかった行動は悪かった。だから、そこだけ謝る」 これで初めて、心からの「ごめんね」が出てくるんです。

それでも言葉が出ないときはたくさんあるから、隣で小声で一緒に言ってあげてください。「ぶ・つ・か・っ・て」「ご・め・ん・ね」と、一言ずつ。

私もずっとやっていました。恥ずかしくなんてありません。

そしてもうひとつ。謝られた側の言葉も、家で一緒に練習しておいてほしいんです。 「いいよ」「大丈夫だよ」「痛くなかったよ」「わざとじゃないんだね」 私はこれを「まぁるい言葉」と呼んでいます。 謝ったら、まぁるい言葉が返ってくる。この経験があると、「ごめんね」は怖い言葉じゃなくなります。妹さんと、パパと、おうちで交代で練習してみてください。

わが家の「ゴメンナサイ」事件

末っ子が幼稚園に入って1週間目のことです。 上の学年の女の子を、ニコニコしながら押し倒してしまいました、私の目の前で。女の子は怪我はないけど、ビックリした表情!私はもう、頭が真っ白。「とにかく謝らせなきゃ」と思ってしまいましたが、いったん深呼吸し、とりあえず私からその女の子に謝ってすぐ、息子に聞いたんです。「なんで、押しちゃったの?」

答えは、「てへへ、だtって可愛かったから」。

……はい。

私、しばらく言葉が出ませんでした。 でも、彼の中では筋が通っていたんですよね。

「好きかも」という好意が先にあって、その気持ちの表現の仕方や伝え方を知らなかっただけ。 だから私は、「押しちゃったことだけ」謝る練習をして、そのあと「可愛いと思った子には、可愛いねって言えばいいんだよ」と教えました。 翌週、彼はその子に「可愛いね、好きだよ」と言っていました、私の目の前で。 (ここではルッキズムの話とかは置いといてください)

行動には、必ず理由がある。 謝れないときほど、その理由は、子どもの中ですごく大事なものだったりします。

■最後に

かおりさん。 「謝れない子として嫌われるんじゃないか」と怖くなる気持ち、痛いほど分かります。私も、相手の親御さんの顔色ばかり見ていた時期がありました。

でも、息子さんは今、「自分の気持ちと、自分の行動を、分けて考える」という、大人でも難しいことを学んでいる途中です。 これができるようになった子は、大きくなってから、ちゃんと自分の言葉で「ここは自分が悪かった」と言えるようになります。 納得してから謝る子は、納得したら本気で謝る子です。

「ありがとう」が言えるなら、大丈夫。 人に気持ちを向ける力は、もう育っています。あとは、「ごめんね」を怖くない言葉にしていくだけ。

今日から全部できなくていい。 まずは次にトラブルが起きたとき、「なんで謝れないの」の代わりに、「おっと、何があったの?」と聞いてみてください。 それだけで、息子くんの口が、ほんの少しゆるむと思います。

運動会、息子さんが「一番」より素敵な瞬間を見せてくれますように。 かおりさんは、ひとりじゃないですよ。

ママ友ドクター より

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P.S. 次回も、私のもとへ届いたママたちの悩みにお返事を書く形で、子育てに役立つコツや話をお届けしていきます。 次回のお手紙は、運動会に絡めたテーマで書いていこうとおもいます。たくさんのママやパパ達の体験談を踏まえたお返事です。お楽しみに。

P.S.2 今回は【子育てQ&A・声かけ】関連のお手紙でした。バックナンバーもあわせて読んでもらえると嬉しいです。

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♪ 白衣を脱いで待ってます、お話ししましょう。

ママ友ドクター 西村佑美

お友だちに「ごめんなさい」を言えずにいたら、頭をぶつけた末っ子と私。

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