「ありがとうよりも聞きたい言葉」~あの日の私へ~
📮ママ友ドクターからの手紙 Vol.1
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今回は、the Letter プロローグとして、エッセイ風コラムのお手紙です。
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人知れず悩んでいた10年前の西村佑美さまへ
「ありがとう、ママ!」って言われると、 なんだか少し嬉しいような……でも、複雑な気持ちになっていませんか?
ママとしては嬉しい。 子どもにありがとうって言われると嬉しいんだけど…… でも、そんな言葉を毎回期待してるわけじゃないし、素直に受け取れない日もある。
ママはただひたすら、子どものためにやってる。 当たり前だよ、大好きだからやってるからね。
だから「ありがとう」って言われなくても、ちゃんと頑張れる……はず。
正直言えば、何のためにやってるのか、わからなくなる日もある。 頭が回らない日も頭が痛い日もある。 子育てこれで合ってるのかな…と不安にさいなまれたり、 自分のことが本当に嫌いになる日もある。 時には子どもがいなかった頃の自分を思い出して、懐かしくなることだってある。
子どもに散々振り回されると、「もう、そばに来ないで!」って思ってしまう瞬間もある。
ごめんねって思ってしまうよね。
それでもね、寝ているときのわが子の顔は、どうしようもなく愛おしい。
さっきまであれほど騒いでふざけて転がりまわって、私をあんなに困らせていたのに。不思議と全部、寝顔を見たら忘れてしまう。
「かわいいなぁ」って胸いっぱいにあたたかい感覚を覚えると、 幸せな気持ちのまま眠りにつく。
そして次の日がくると、幸せな気持ちとかすっかり忘れて、 朝からいろんなことと戦うことになる‥‥
こんな日がいつまで続くんだろう。 そう思って、泣けてしまう日もある、親ならみんなそう。
でもある時、ふと気がつくの。
子どもは大人の私よりもずっと速いスピードで成長していて、 私の心が追いつかないうちに、私がいなくても平気な時間が増えていく。
今日だって立ち止まってふとスマホの中の写真を見返すと、貴重な瞬間ばかりがあっという間に過ぎていったことに気づく。
あの日々は、大変すぎたけど、今となっては嘘みたいに愛おしかった時間だったの。
なのに……当時はわからなくて。 どうしてあんなに可愛い時期のわが子を、可愛くないなんて思っていたんだろう…って、またちょっと落ち込む…そんな日々は繰り返される。
もちろん何年もたった今だって、可愛いと思ってる。 いつだって可愛い、赤ちゃん時期を過ぎてもずっとかわいい。 しつこい愛情表現は、たしかにちょっと困ってしまうけれどやっぱり嬉しいし。
「ありがとう」は、確かに言ってほしいけれど、 それよりも何年たっても今でも毎日、聞きたい言葉があるの。
__________「ママ、だいすき」
魔法の言葉だよね。たとえイライラしている時でも、きっと、ふっと力が抜けてしまって 「ママも大好きよ」って、ちゃんと目を見て伝えたくなるから。
そして、そっと心に誓うの。 「世界中があなたの敵になっても、私だけはあなたの味方でいられる自信があるわ」ってね。映画のセリフみたいに。
でも、次の瞬間、牛乳をうっかりこぼした姿を目撃したら、 もうそんな誓いはどこかへ吹き飛んでしまうのだけれど(笑)
あの日、悩んでいた私へ、今だから伝えたい。
あの日想像していた未来と今は、少し……いや、だいぶ違っているかもしれないけれど。
自慢できるような子育ては、まだできていないと思うけど、 でも、大丈夫、あなたは今日も、がんばれている。
大丈夫、わが子をもう一度、大好きになれているよ。
10年後の私、ママ友ドクター ゆみ先生 より
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📮【解説コラム】なぜ、過去の自分に手紙を書いたの?
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今回の手紙を書きながら、ずっとある夜のことを思い出していました。
2歳の息子を自転車の後ろに乗せて走った夜のことです。
お遊戯会の帰り道でした。泣き叫び、まったく参加できなかった息子を作り笑顔で引っ張って、他の保護者の「気の毒そうな視線」には気づいていないふりをしながら、そそくさと退場した帰り道。
自転車に乗せた瞬間にぴたっと泣き止んで、ニコッと笑ってくれた息子の顔。
その顔を見た瞬間、後にも先にもあの一度だけ、私は息子の前で大粒の涙を流して泣きました。
見上げた夜空の星が、涙で滲んで光の筋になっていました。
あの頃の私は、息子のことが「かわいい」と思えない日がありました。
今だから書けることです。
「こんなはずじゃなかった」と思っていた。我が子を初めて抱いたときに描いた夢と、目の前の現実があまりにも違いすぎて、どこで間違えたのだろうと考えていた。
入園を断られた夜も、3歳児健診で他の子に「あの子赤ちゃんみたい!」と言われた瞬間も、療育に片道60分かけて通いながら「定型発達児のお母さんが羨ましい」とふと思った夜も。
愛していないわけじゃない。でも、「かわいい」という感情が、素直に出てこない日があった。
そのことを、誰にも言えなかった。
「小児科医のくせに」と思われそうで。こんなことを感じる母親は最低だと、自分を責めていたから。
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それが今、どうなっているか。
息子は中学生になりました。
よく喋ります。本当によく喋る。しかもその話が面白い。発想が独特で、切り口がいちいち斜め上で、「その視点、どこから来るの?」と笑ってしまうことが毎日あります。感性も豊かで、ふとした瞬間に「え、そんなこと考えてたの?」と驚かされる。
あの頃の私が想像していた未来とは、だいぶ違う。でも、大好きです。
心の底から、大好き。
「定型発達児が羨ましい」と思っていた私が、今は本気でそう思っています。
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だから私は、自分が主宰する「子ども発達相談アカデミーVARY」で 「もう一度、わが子を大好きになろう」というテーマを掲げています。
あの頃の私のように、「かわいいと思えない自分」を責めているお母さんが、きっとどこかにいるから。「こんなはずじゃなかった」と、ひとりで抱えているお母さんが、いるから。
その気持ちは、おかしくない。
愛しているからこそ、苦しい。 期待しているからこそ、現実が痛い。 それは、わが子への愛情の深さの裏返しです。
そしてその先に、必ず「もう一度大好きになれる」瞬間があることを、私は自分の経験から知っています。
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「前略、西村佑美さまへ」と書いたのは、あの頃の私に届けたかったからです。
でも手紙を書きながら気づきました。あの夜の私に届けたかった言葉は、今もどこかで誰かが必要としている言葉だと。
もし今、「かわいいと思えない日がある」と感じているなら。「こんなはずじゃなかった」と思いながら、それを誰にも言えずにいるなら。
その気持ちを、そのまま持ってきてほしい。
待っていますね。
ママ友ドクター ゆみ先生 こと 西村佑美
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P.S.
最後まで読んでくれて、ありがとうございました。
次回からは、私のもとへ届いたママたちの悩みにお返事を書く形で、子育てに役立つコツや話をお届けしていきます。
次のお手紙は【「幼稚園行きたくない」という息子に悩むママさんへ】、お楽しみに!
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