AIで書いた返信「完璧なやさしさ」に私が寂しくなった理由~効率化してはいけないもの~
📮 ママ友ドクターからの手紙 ── Vol.25──
「AIが書いた“完璧な優しさ”に、なぜ私は寂しくなったのか」
Dear Parents,
朝晩の空気がすっかり秋らしくなりました、寒がりの私はすっかり毛布生活に入りました。
インフルエンザの流行の波も子どもの学校にやってきてしまいました。ワクチンの効果が出るといいのですが(;'∀') さて今回は、いつものお悩みへのお返事をお休みして、最近、私自身に起きた出来事を書かせてください。
***
みなさんは、誰かから届いた文章を読んで、
「あ、これ、AIが書いたんだな」
と気づいて、少しがっかりしたこと、ありませんか。
私は最近、ありました。
しかも相手は、とても大切な友人とのやりとりで発覚しました。
私は2020年から「ママ友ドクター」として活動を始めました。
そのおかげで、医師の仕事だけをしていたら出会えなかった、いろいろな業種・職種の方と知り合うことができました。
その中に、5年以上サポートしてくれている、私にとってメンターのような存在の友人がいます。
私は普段、子育てに悩むお母さんたちの相談を受けて、伴走する仕事をしています。
でも、私自身も、ご存じの通り子育て中の母親です。
医師で、発信者で、著者で、講演者で、そして三児の母。
いくつも役割を抱えていると、当然、疲れてしまう日もあります。
先日、出張から帰ってきた日のことでした。
疲れが重なっていたんでしょうね。
普段なら気にならないような些細なことに、気持ちがずーんと沈んでしまって。
そんなとき、ふと、その友人に話を聞いてもらいたくなったんです。
気づけば、けっこう長いメッセージを書いていました。
相手は優秀な経営者で、AIを使いこなして、いくつも事業を手がけている忙しい方です。
「こんな長文、迷惑じゃないかな…」
そう思いながらも、その日は誰かに頼りたい気持ちのほうが勝って、えいっとLINEを送信しました。
するとすぐ、反応してくれました。
何度かやり取りをしたあと、友人から突然、長い返信が届きました。
とても、よくできた文章でした。
私の気持ちを的確に捉えて、状況を整理して、私が欲しかったはずの言葉が、きれいに並んでいる。
なのに、読んだ瞬間、気づいてしまったんです。
「ああ、これはAIが書いた文章だ」
友人は、私のために、メッセージをAIに読み込ませて返信文を作り、内容をちゃんと確認したうえで送ってくれたようでした。
だから、そこには友人自身の判断も、気持ちも優しさも入っています。
AIを使ったからその言葉は本人の気持ちじゃない──なんて、決めつけることはできません。
それでも、5年以上やり取りを重ねてきた私には、いつもの友人の文章と違うことが、すぐに分かってしまいました。
そして、その瞬間。
私は、悲しくなったんです。
不思議なんですよ。
返信の内容に、不満はひとつもないんです。
むしろ、私が理屈上は欲しかった返答が、ちゃんとそこに書いてある。
それなのに、心が満たされない。
なんでだろう、と考えました。
たぶん私は、どこかでAI作文を読んで、
「面倒だったのかな」
「私の話に時間を使うのは、負担だったのかな」
と感じてしまったんだと思います。
もちろん、友人にそんなつもりはなかったはずです。
忙しい中でも丁寧に返そうとして、AIの力を借りてくれたのかもしれない。
頭では、分かっているんです。
でも、あのとき私が欲しかったのは、完璧な回答ではありませんでした。
「大変だったね」
「疲れてるんだね」
たった、それだけでよかった。
少しくらい不器用でも、言葉が足りなくても、文章が整っていなくても。
その人が、その瞬間だけは私のために立ち止まって、自分の言葉で向き合ってくれた。
そう感じられることが、私が求めていたことだったんですね。
我ながら、わがままだなあと思います(笑)。
でも、考えているうちに気づきました。
人は、言葉の「内容」だけを受け取っているんじゃない。
そこに使われた時間や手間、「あなたに向き合おう」という気持ちまで、一緒に受け取っているんだ、と。むしろそっちがメインなのかも。
私が欲しかったのは、「正しい答え」ではなかった。
これ、子どもたちも同じなんです。
私は、ハッとしました。
これ、私がいつも診察室や相談の場でお母さんたちにお伝えしていることと、同じなんです。
子どもが泣いているとき。
かんしゃくを起こしているとき。
お友だちとケンカして帰ってきたとき。
私たち親は、つい「正しい答え」を渡したくなります。
「だから言ったでしょ」
「こうすればいいんだよ」
「次からは気をつけようね」
どれも、間違ってはいないんです。
でも、子どもがその瞬間に欲しいのは、たぶん正論ではありません。
「いやだったね」
「くやしかったね」
親が手を止めて、自分のほうを向いて、かけてくれる一言です。
私はよく、「気持ちには寄り添う。でも、行動には寄り添わない」とお話ししています。
行動をどうするかは、そのあとで一緒に考えればいい。
先に必要なのは、「気持ちを受け止めてもらえた」という実感のほうなんですね。
今回、私は「正しい答えをもらったのに、寂しい」という側を、身をもって体験しました。
大人の私でさえ、こうなんです。
子どもたちなら、なおさらですよね。
AIを否定したいわけではありません
誤解のないように書いておくと、私はAIを否定したいわけではありません。
AIは本当に便利で、私も毎日のように助けてもらっています。
実はこのお手紙も、移動中に録音した自分の声を、AIに文字起こししてもらうところから書き始めました。
でも、もとになっているのは私の声で私の想いです。最後は自分で読み返して、自分の言葉に直してから、お届けしています。
子育ての悩みをAIに相談しているママ・パパも、きっと増えていますよね。
子どもが寝たあとの夜中に、誰にも言えないことを打ち込む。
すぐに、やさしくて、整理された答えが返ってくる。
それで気持ちが軽くなるなら、どんどん使っていいと思います。
ただ、もしも。
ちゃんとした答えをもらったのに、なぜか涙が止まらない夜があったら。
それは、あなたが弱いからでも、わがままだからでもありません。
きっと、あなたが欲しいのが「答え」ではなく「人」だからです。
誰が、自分のために、その言葉を選んでくれたのか。
自分の話を聞いて、何を感じてくれたのか。
今この瞬間、自分と向き合ってくれているのか。
疲れているとき、傷ついているとき、心に余裕がないとき。
人が求めているのは、整った文章や的確な助言だけではないんだ。
AIがこの先どこまで進化するのかは、分かりません。
でも、少なくとも今の私には、人と人が向き合うことでしか生まれないものがある、と感じられた。
だから私は、ライブで届けることにこだわっている。
この出来事は、私が運営している「子ども発達相談アカデミーVARY」のあり方にも、つながっています。
2022年4月にスタートして5年目になりましたが毎週欠かさずライブ配信での質問を受けて回答し、少人数の相談会、座談会など、リアルタイムで人と人が向き合う時間を大切にしています。
もちろん、録画した講義や動画教材にも大きな価値があります。
必要な知識を、必要なときに、何度でも学べますから。
でも、私はそれだけで完結させたくないんです。
なぜなら、私は医師だからです。そう、医師だから。
診察室では、目の前の患者さんやご家族の表情を見て、声を聞いて、その場の反応を受け取りながら、言葉を選びます。
同じ質問でも、相手の状況によって、伝え方は変わります。
用意した正解を一方的に渡すのではなく、その人にとって何が必要なのかを、目の前で考え続ける。
医療も発達・子育て支援は、オンデマンドでもなければアーカイブもない。
常に、そのときそのときの人と人とのオンタイムでつながるライブなのです。
オンライン化して効率化が当たり前のAI時代だけど、私はそこだけは手放したくない。
効率化できることは、どんどん効率化していい。
でも、効率化してはいけないこと・時間が、ある。
世の中には効率化してはいけないものがある。
それは何か?と言われても一言では表せないけど、それを見極めて教えていくことが、これからの時代の一つの大切な子育て・しつけだと気付きました。
私のこのニュースレターだって、SNSだってライブ配信は、決して完璧ではありません。
話は脱線するし、日本語がちょっとおかしいときもあります。
そんなときは「帰国子女だから」と言い訳してみたり…(笑)。
私は自分の言葉で話したい。
きれいに編集された動画より、不器用な一言のほうが、誰かに届くような気がしていて、ショート動画ブームになっても、なんだか振り切れないでいました。
完璧に整理された文章より、「あなたの話を聞いていますよ」という姿勢が伝わる手段を選び続けたい。
2020年に始めたママ友ドクター活動は、子ども発達相談アカデミーVARYというオンラインサロン・スクールへとつながり、今では延べ250組以上の親子を支えています。
私を信じて、頼ってくださる方がいる。
だからこそ、AIがどれだけ進化しても、私は人として向き合う時間を効率化せずに、大切にしていきたいと思っています。
AIが何でも答えてくれる時代だからこそ、
人が人に時間を使うことには、これまで以上に価値がある。
ただ、それを、まだ子供たちは知らないのです。
知らないまま大人にしたくはありませんよね。
最後に、ひとつだけ。
今日、お子さんが何か話しかけてきたら。
ほんの少しでいいので、手を止めて、その子のほうを向いてみてください。
気の利いたことは、言えなくて大丈夫です。
「そっか」
「大変だったね」
もしくは、お子さんが語った言葉をそのまま繰り返すだけでもいい。
それだけで、きっと、ちゃんと伝わります。
そして、これを読んでいるあなたにも。
私から言わせてください。
ここまで読んでくれてありがとう。
あなたはいつも、頑張ていますねっ。
ママ友ドクター ゆみせんせいより
P.S.
最近、誰かにかけてもらって嬉しかった「一言」はありますか。よかったら、公式LINEで教えてくださいね。
次回は、いつものように、私のもとへ届いたママたちの悩みにお返事を書く形でお届けします。お楽しみに。
なお、現在、私が代表を務める一般社団法人日本小児発達子育て支援協会認定のペアレントアドバイス講座を開催中。あわせて子ども発達相談アカデミーVARYの11期生も募集しています(どちらも10月30日まで)。
P.S.2
今回は【親のマインドケア】関連の、エッセイ風のお手紙でした。バックナンバーもあわせて読んでもらえると嬉しいです。
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